【iPadの利点をそこなうシンクライアント】
iPadの利点はなんと言っても起動時間が早いこと。ノートPCと違って、これは外出先では威力を発揮します。
しかもバッテリーの持ちがいい。当然、ポストPCとして、在庫管理や顧客管理、施設管理など様々なシステムの端末として使いたくなるのが自然の流れだと思います。
一方でシンクライアントの普及がすすむ中、『iPadのようなタブレット端末をシンクライアントの端末として使えないか』という検討をされている企業も多いのでは無いかと思います。
我が社でも同様の背景の中、本プロジェクトがはじまり、結果として、アプリ開発という全く違う形になりました。
その試行錯誤を振り返り、改めてレポートさせていただきます。
1)通信環境
社内LANでシステムを構築している時と違って、iPadのようなタブレット端末の場合はWifiか3GかLTE(Xi)で通信環境を構築する事になりますので、通信速度が有線LANと比べて、どの程度遅くなるのか、実際に様々な機器で調査しました。構内のみで使用するシステムであれば、Wifiが使えますが、今回は社外の、しかも地方での使用を考慮しなければいけなかったため、Wifiルータや3GタイプのiPadをあちこちに持っていって実測しました。結果として、現状ではまだ3Gを前提としなければならない場合が多い事がわかりました。『3Gでも業務に支障無く動くこと』が一つ目の課題となりました。
2)リモートデスクトップ
『リモートデスクトップであれば、通信の速度はあまり気にならないのではないか』という仮説のもと、さまざまな製品を試しました。けれども、これには大きな落とし穴がありました。確かにデモ程度の利用であれば、なんとか動くように思えます。しかし、実際に使ってみると、すぐにその不便さに気がつきます。iPadからリモートデスクトップでWindowsにアクセスしても、もともとマウスを前提としているUIのため、タブレットでの操作に適していないのです。しかたなくソフトマウスを使う事になるのですが、確かに使える事は使えますが、そこまで苦労するなら、そもそも何の為にタブレットにしたのか、タブレット端末の操作性を殺してまでリモートデスクトップを使う意味が見いだせなくなってしまいました。
3)VPNでWebシステムに接続
そこで、次に、VPNでWebシステムに接続する事を考えました。これだと元々IE用に作っていた社内システムをSafariに対応するだけでいいので、比較的簡単にシステムを構築できそうだったからです。マルチウインドウにならない部分だけ書き換えてやればいいわけです。ところが、今度はリモートデスクトップと違って、通信データが格段に大きくなり、iPadのブラウザ側でレンダリングしないといけないため、ページを切り替えるまでに時間がかかりすぎてしまいました。また、電車内での使用など、通信状況も常に安定している状況では無いため、そもそもWebシステムの端末として3Gに頼るのはリスクが大きい事がわかりました。
3)iPadアプリ
結局、最後にiPadアプリを検討する事になりました。操作性は格段によくなりますので、タブレット端末を導入した意味が感じられます。常に通信しなくてもiPad内にデータを貯めておき、通信状態がいい時にサーバーと同期を取ればいいので、本来のタブレットの良さが引き出せます。ただ、これだとどうしてもセキュリティが気になります。せっかくシンクライアントで端末側にデータを置かないようにしたのにアプリだと端末にデータを置く事になってしまいセキュリティが弱まってしまいます。しかも、社内だけでなく、社外のどこに持っていくかわからない端末ですから、リスクが余計大きくなります。もちろんMDMを導入してリモートでワイプやロックができる状態にしていますが、やはり不安は完全には払拭できません。
4)結論
結局、iPadアプリでのデータは一時的に暗号化して保存しておき、サーバー同期後に速やかに削除する事にしました。通信速度についてはhttpを使わずにWebSocketを使う事で、非同期通信とし画面更新を早める対策をしました。この事でWebサーバーを立てなくていいので外部からの攻撃に対しても、ある程度の堅牢性を保てる結果となりました。
単なる電子カタログや電子マニュアルでは無く、今後、本格的に企業が自社システムと連携したiPadの活用を検討する時に、同様の試行錯誤をされる企業も多いと思います。少しでも参考にしていただければ幸いです。
三池(@mmiike3)